縄張と曲輪

(2)縄張と曲輪について

  • 縄張とは、曲輪や堀、門、虎口等の配置をいいます。お城を築くときに、まずは選地で場所を決めますが、その後に選地した土地 に縄を張って、石垣、土塁、堀などの配置を決めたことから、縄張りと呼ばれるようになったようです。
  • 曲輪とは、本丸や二の丸などの区画のことを言います。もともと、守りやすいようにその区画を円形にしたので曲輪と言われたそです。
  • 縄張りは、中世や戦国時代、近世によって少しずつ違うので、近世城郭の平山城や平城について紹介します。

(3)縄張の種類

  • 縄張は、曲輪の並べ方によって名前が付けられています。  
 縄張の種類        概        要      例の城名
 輪郭式

本丸四方を輪のように二の丸や三の丸で囲い込みます。

平城に多いです。

山形城、米沢城、高田城、駿府城、二条城、篠山
円郭式)

輪郭式の一種で、郭の形がほぼ円形で同心円状になっています。日本では唯一田中城で採用されています。

田中城
(渦郭式)

輪郭式の一種で、平山城で利用される場合があり、頂上の中心郭から渦巻状に段々となった郭が形成されます。一二三段とも言われます。

姫路城、丸亀城
梯郭式 本丸の二方や三方を囲む配置で本丸が中心にはなっていません。本丸が、河川や断崖など天然の要害と接する場合が多いです。平山城や平城に多いです。 弘前城、小田原城、岡山城、萩城
連郭式 本丸と二の丸、三の丸を一直線に串団子のように並べた形式です。山の尾根に築く平山城や山城に多いです。 盛岡城、水戸城、大垣城、彦根城、高知城、島原城
稜堡式 幕末になって西洋の築城技術を取り入れた郭で、城壁を剣のように尖らせたものを外側に向けて配置します。 五稜郭、龍岡城、四稜郭、戸切地陣屋

  ↓環郭式          ↓(円郭式)        ↓(渦郭式)       ↓梯郭式         ↓連郭式

(4)曲輪(郭)の種類

  • 曲輪の名前は、役割や方位によって様々な名前が付けられています。
     区画の状態  曲輪(郭)の種類      説        明
 ①城郭の中心的区画  本丸、天守丸、天守曲輪 主に、天守閣とそれに付随する櫓や御殿を配置、戦闘時には最後の砦となるべき区画。江戸時代には、モニュメント的な場所。お城によっては、政務の中心的な御殿も存在しました。

②本丸を取り巻く或いは防衛する区画

1)二の丸

   

2)三の丸

1)主に政務を行ったり、藩主の生活の場所として御殿が置かれました。更に細分化されて、東二の丸、西二の丸、南三の丸などと呼ばれた曲輪もありました。

2)大城郭の場合は、藩主の家族の生活の場所で御殿を配置しました。更に細分化されて、東三の丸、西三の丸、南三の丸などと呼ばれた曲輪もありました。

③中心的な機能の周辺を防衛する区画

1)北の丸、東の丸、南の丸、西の丸など

2)帯曲輪、腰曲輪など

1)方角で表示する場合です。西の丸は、将軍や藩主の隠居所となったり、世継ぎが待機して居住する御殿が置かれることが多かったようです。

 2)僅かな面積の場所を平面として何かに利用しました。

④風流や憩いを求める区画

山里曲輪、山里丸、数寄屋曲輪、数寄屋丸など

 来客でお茶をもてなしたりや、藩主・その家族の休息の場所として設営された茶室や御殿が置かれた曲輪です。

⑤特別な目的の物を扱う又は配備した区画

硝煙曲輪、米蔵曲輪、馬屋曲輪など

 主要曲輪から少し離れて、危険な弾薬を収納する蔵が置かれたり、お城内の食糧を保管する蔵などが設置された曲輪です。

 

⑥その他各種目的で名前を付けて利用する区画

水の手曲輪、太鼓丸、鐘丸、出丸など 井戸が掘られている曲輪や川など水辺近くの曲輪であったり、城下に時などを知らせる太鼓櫓や鐘櫓などが置かれた曲輪です。

⑦ある人物が管理していた或いは居住していた区画

 

 勘助曲輪、常盤曲輪など  お城の中で知名度が高い人物が居住した屋敷があったりして、その人名が付けられて後世引き継がれている曲輪です。

 城郭全体を囲い込み防衛する広大な区画

 総構 

 ①~⑦を取り込んで長大な土塁や堀で囲み、門で外部との出入りを抑制して監視します。

江戸城、岩槻城、小田原城、京都聚楽第などに見られます。この詳細は後の章で紹介します。